研修レポート) 社会福祉法人慈愛会 全5施設合同で「地域共生社会」をテーマにした研究発表会を実施
11月8日(金)
社会福祉法人慈愛会(以下、社福)慈愛会)では、「見つけよう身近にある共生社会 地域とつなぐ慈愛の輪」をテーマに、5施設からなる法人全体の合同研修会を障害者支援施設・愛の浜園で実施しました。社福)慈愛会において5施設の代表が一同に会し研究発表を行うのは、今回が初めてとなります。
各拠点の発表内容は下記の通りです。
愛の浜園の発表
発表者:辻原広文さん(指定特定支援事業所「てぃだ」・相談支援専門員)
奄美大島の自然や特徴、愛の浜園の事業内容を発表しながら、愛の浜園が長年地域と共に取り組んで来た歴史を紹介。学校や集落の行事に積極的に参加するだけでなく、運動会や納涼大会、感謝祭などでは地域の方々を園に招いて相互交流を育んでいる取り組みも紹介されました。また利用者の5年前と10年前と現在を比較し、自らが想像しているより、高齢化・重度化・ADL(日常生活動作)の低下のスピードが速い事が強調されました。その上で、今後これまでと同じ取り組みが出来るのか?などの問題提起がなされ、利用者の為に現状に合う「共生社会」の実現と身近にある地域資源の活用(他のデイケアやリハビリ事業所との連携)が提案されました。形を変えた地域社会との繋がりを模索し、5年後、10年後の利用者ひとりひとりの人生を大切にする想いが語られました。
おひさま保育園の発表
発表者:中川美恵子さん(主任保育士) 若松幸夏さん(副主任保育士)
保育方針「見守る保育」、縦割りでない異年齢児保育、全体ではなく個を大切にするねらいに応じた選択制の保育、複数の保育者で関わり「個」に応じた丁寧な関わりや多面的にとらえた視点で援助・指導を行う「チーム保育」など、園の理念・目標等を発表。共生社会への取り組みとして、身近な地域とのかかわりを大切に、開かれた保育所を目指す中、世代間交流事業(老健施設訪問)、商店街お買い物や地域清掃(地域交流)、地域住民の園行事へのご招待、園庭の開放などの事例が紹介されました。またこれらの取り組みをイラストや写真で保護者へ発信する事で、親子で地域への関心を高める取り組みも実施されるなど、普段から地域を意識した活動がなされている事に関心が集まりました。今後の取り組みとして、子育て支援、発育相談、災害時の地域への応援要請、世代を超えた交流の場の提供、多様な得意分野を持つ地域住民の招待など具体的な方策を上げ、共生社会構築に向けた方針をまとめました。
架け橋 (サービス付き高齢者向け住宅・デイサービス・居宅介護支援事業)の発表
発表者:松下真木子さん(生活相談員)
「架け橋」の事業概要、サービス内容をご紹介いただき、発表者の松下さんより、実際に利用者さんに日常的に行われているシナプソロジー(脳トレ)をご指導頂きました。頭で分かっていても、なかなか身体が言う事をきかない歯痒い状況に、利用者だけでなく研修参加者自身にも脳トレの重要さが伝わったようでした。また共生社会への取り組みとして、柔道整復師による転倒予防教室、きずな保育園の園児たちの施設訪問、いづろ今村病院託児所との交流など地域・世代をまたにかけた取り組みを紹介して頂きました。またいづろ今村病院の健康祭りへの出店呼びかけ、生協CO-OP移動販売の要請、清掃活動、おはら祭りへの参加、など地域との関係強化や地域資源を活用したサービスの充実化の事例を発表して頂いています。また今後の課題として地元小中学校との交流の実現や地元商店街との交流強化などの課題も明らかになりました。
きずな保育園の発表
発表者:徳田弥生さん(主任保育士) 濱田愛さん(副主任保育士)
各拠点同様慈愛会の、-原点は慈愛-という理念のもと、まずは保育方針、園児たちの普段の生活が紹介されました。「食育」に力を入れているという活動内容では、昼食の3食食品群の子供たち自身による掲示、職員による魚の解体ショー、出汁の飲み比べなど、子供の食に関する望ましい基本的な生活習慣の確立に向けた取り組みを紹介いただきました。また施設を一にする「介護付き有料老人ホーム・慈愛の郷」と連携した取り組みを行い、年長者との積極的な交流を図るだけでなく、台風訓練、津波訓練など有事に備えた活動を共同で行っている事例も発表されました。また卒園児との異年齢交流、慈愛の郷とのお互いの行事による相互交流も定期的に開催されています。さらには中学校職場体験の受け入れや職業講話、鹿児島女子短期大学からボランティア、実習生の受け入れ等を実施しながら、次世代の保育人材への実践的機会の提供にも取り組まれています。保育園が地域社会に溶け込み、浸透し、貢献できるよう多角的な活動を通じ実施しているわけですが、今後は子育て家庭へのアプローチを次なるチャレンジに掲げられています。
南界園(特別養護老人ホーム)の発表
発表者:片板要一さん(生活相談員)
種子島に拠点を置く南界園は、理念のもと地域の交流拠点としての使命を果たすべく、その多様な取り組みを紹介されました。特別養護老人ホームの入居者の平均年齢はすでに87.6歳へ達している南界園と地域の交流は、近隣小学校の触れ合い活動(お誕生会、お神輿など)、地域の訪問活動(大正琴・バンド演奏・カラオケ同好会など)、夜間防災訓練(避難誘導を地域の方にお願いする)だけでなく、700名もの来園者に達する南界園夏祭りの開催などもあるとのこと。一方で介護保険制度では提供できないサービスや介護認定を受ける前段階の高齢者に対する生活支援の充実を図るため、新しい取り組みにも挑戦されているそうです。その取り組みは手探りで、ニーズを調査するだけでも苦労があった事や、地域との信頼関係を築くまでの過程や経験などもお話し頂きました。現在は「お出かけ・お買い物支援協力隊」を組織し、地域に対し高齢者のお買い物の送迎や付き添いなどを行い、好評を得ているとの事でした。今後の展開や課題として、南界園のコーディネーターが受けもつ担当地域との信頼関係構築、サロンの活動拡充・地域課題調査の実施・お出かけ買い物支援協力隊のさらなる活動の充実を挙げられ、高い志を示されました。
昭和48年1月に設立された社福)慈愛会では、「原点は慈愛」の理念のもと、現在、介護・障害福祉・保育の三分野の事業を鹿児島県下5つの拠点を運営しています。今回の合同研究発表会において、日ごろ県下の各地域において発揮されるストレングス(=強味)を集約・共有することで、昨今福祉業界で取り組むべき課題としてフォーカスされる「地域共生社会」の構築に向けた取り組みを加速させることを目的としています。
第1回社会福祉法人慈愛会「合同研究発表会」実施概要
スローガン: 「見つけよう身近にある共生社会
地域とつなぐ慈愛の輪」
日 時: 令和元年11月8日(金)
場 所: 愛の浜園
内 容: 各拠点代表者による地域共生社会を
テーマにした発表と研修
参加事業所:
①愛の浜園(奄美市名瀬/障害者支援施設)
②南界園(熊毛郡中種子町/特別養護老人ホーム)
③おひさま保育園(鹿児島市小原町/保育)
④きずな保育園(鹿児島市高麗町/保育)
⑤架け橋(鹿児島市高麗町/サービス付き高齢者向け住宅)
参加人数: 40名